ズンタカ讃歌・発動編〜ホワイトドールの御加護のもとに〜
(承前)
全部ひっくるめてズンタカタッタッタ〜
ここに引っかかるかどうか、我々は試された。貴方はどうだっただろうか。
何を「全部ひっくるめ」るのか。「全部ひっくるめ」るとは何か。そもそも「全部」とは何を指すのか。
全部、は、文字通り「全部」なんだろうな。この楽曲であり、アルバムであり、℃-uteおよび各メンバー、Hello!Project、業界事情、生きていく上での喜怒哀楽、世の中のあれやこれや、・・・歌い手・送り手・聴き手の個人的な事情も含めて全部。それらを踏まえ、背負った上で、カラ元気でもいいから力強く行進していこう、という呼びかけ、願い、誓い。
日本古来のリズム、楽曲形式である音頭を強引にマーチだとしてまで用いた背景に、音頭で踊る「盆踊り」という行事がそもそも「供養」の儀式である*1ことがあったとしたら・・・なんて考えると、もう一年にもなろうかというあの日に思いを巡らせないでもないけれど、「今こそ足元を見つめよう」という気分がある、しても間違いではないだろうね。そしてつんくボーイ兄さんは『HOW DO YOU LIKE JAPAN?〜日本はどんな感じでっか?〜』『行け 行け モンキーダンス』を持ち出すまでもなく、「日本」「和」に対するこだわりが強い人だ。
モーニング娘。に『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』という名曲があるけれど、これだって「願い」というテーマは同じで、描き方を変えてみたにすぎないのかもしれない。
それはそれとして、「全部ひっくるめ」るというと、富野チルドレンの一人を自負するヲレの頭には、
∀
という記号が浮かぶ。
ターンエーはターンA、turn to Aでもあるから、原点に戻ろう、という意味合いだってないわけじゃない。
さらに、今の℃-ute、というかあるメンバー、ぶっちゃけリーダーと『∀ガンダム』をつなぐキーワードがある。
『∀ガンダム』の主人公メカである∀ガンダム(ややこしい?)が起動するのは第2話なのだけど、そのサブタイトルをご存知だろうか。確認のためにテレ玉再放送分を録画した動画を見たら腰が抜け、次に涙を流しながら「ドモアリガトーミスターツンクチャン ソーレーソレソレー♪」とボコーダーかけて歌っちゃったぞ。冗談はさておき、Wikipediaで事足りるのでぜひ軽い気持ちで検索してみていただきたい。
そういえば『∀ガンダム』の登場人物は、理念が先に立つムーンレィス、とにかく行動あるのみの地球人、誰もが「人らしく生き」ていたな。
春ツアーでメンバーがヒゲ着けて出てきたら卒倒するかもな。おっとヒゲじゃなくてチークガードか。
『ストロンガー』やハワイがある以上、新曲の発売とプロモーション活動、コンサートツアーのスタートが4月になるのはしかたない。それならば、アルバムの発売が2月上旬というのは早いのではないか。2ヶ月あまりも間が空いてしまうと勢いが削がれてしまわないだろうか*2。
それでも踏み切ったのは、「℃-ute」の新しい音源に飢えたファンのニーズに応えるため、だけではなくて、2月8日に発売日を設定することで、店着日がその前日、すなわち2月7日になる、できるからではなかったか。歌詞カードの裏表紙とスタッフクレジットのカードを赤、CDレーベル面を青、DVDレーベル面を黄色で作ったのも、きっとそういうこと。これ通常盤ではどうなってるんだろ、買って確かめるしかないかなぁ。
そういうタイミングで発売されるアルバムの中に、ただ聴いていたらわからないくらい巧妙にキーワードを埋め込んで、古くから親しまれてきた形式の楽曲でもって、「原点に戻ろう」*3「足元を見つめていこう」、これまで経験したあれやこれやを「全部ひっくるめて」進んでいこうと伝える。愛情があるのか根性が曲がっているのかヲレにはわからない。
二十歳になった人だけでなく、コラボイヤーを終えて再出発を図る℃-ute全体に向けてのものでもあるかもしれないな。
もちろんこれらはヲレ個人の連想、妄想、こじつけ、ガノタ乙、ヤジマ絶対主義あるいはヤジマ史観であり、つんくボーイ兄さんも世代的にガンダムを知らないはずはない*4、というのを考えても、さすがに∀までは追ってないだろうし、限りなく100%に近い偶然に違いない。
そうだったとしても嬉しい偶然じゃないか、積極的に誤解したい。正解より気持ちのいい誤解なんて、滅多に出会えるものじゃないぞ。
書いた人間としてはガンダムネタをオミットしてもなんとなく通じるよう努めたつもりだけど、ヲレのやることだからハズレてるんだろうなきっと。
とにかく、ここまで意義深いものを感じさせる楽曲はアルバムの中で他にないし、他のアルバムにも「ここに入れなければならなかった」というほどの楽曲は、そりゃあ後から振り返れば結果論的に浮かんでくるかもしれないけれど、ほぼリアルタイムで感じさせたものはちょっと思いつかない。℃-ute以外で何かあったかな・・・とボンヤリ考えを巡らせていたら『好きな先輩』ってのを思い出したけど。
こういう読み込み甲斐のあるものがたまに出てくるから、つんくボーイ兄さんの仕事って大好きなんだヲレ。ミュージシャンとしての愛情を惜しみなく注いでくれている。職業作家に徹しきれないことは、欠点ではないはずなんだ。
何かしらテーマやメッセージを織り込んだ楽曲に関してはそれについてコメントを出すことが多いけど、この曲に関しては、
ある種、このアルバムのテーマ曲。
というか℃-uteのテーマ曲くらいのつもりで作りました。
程度にしか語られていない。
すべてを語らない。そんなシャイネスというより「ええかっこしぃ」な部分はつんくボーイ兄さんの欠点の一つではあるけれど、たまらない魅力でもある。
こちらの「解釈」を挟み込むスペースがある、これが嬉しい。受け手がそれぞれに解釈することで、その数だけ「俺だけの」楽曲が出来上がり、それを持ち寄って披露する楽しみも生まれる。またガンダムネタで申し訳ないけど、近所の模型店等のガンプラコンテストに出品した記憶ってない? 合わせ目も満足に消せてないようなのにベタベタ色塗ったものでも、それは一人ひとりの「自信作」だったし、出品すること自体がとても楽しかったし、店の常連さんが作った神業としか思えない作例を直に見られるのもいい経験だったよね。
アイドル・ポップスや歌謡曲、あるいはそれらのビジネスについて語る場も、そういうコンテストを繰り返して今まで続いているんだ。これからも続けていきたいとヲレは思う。貴方はどう思う?
話が逸れたけど、そうやって受け手が自由に想像できる「遊び」を残した、ヴォーカルを伴う大衆音楽を、ヲレは「歌謡曲」と呼びたい。
だから、この『ズンタカマーチ〜人らしく生きよう〜』は真っ当な歌謡曲であり、そればかりか℃-uteあるいはつんくボーイ兄さんの「歌謡曲宣言」かもしれない・・・なんてことも頭に浮かんでくるのよ*5。
なんとなれば、「歌謡曲とは何か」という命題を前にすると必ず脳裏に浮かぶ一文がありましてね。
歌謡曲とは、分別不可能のミクスチュアミュージックなのだ。だからこそ、底なしの魅力をたたえている。あらゆるものをガツガツと飲み込み、勝手な解釈で咀嚼し、ブリブリと排泄していく音楽なのだ。
(小川真一『クロニクルをひもとく*6前に、最初に定義しておこう 歌謡曲は「洋楽」である』<特集アスペクト39『歌謡ポップス・クロニクル──素晴らしき歌謡曲に愛をこめて』[アスペクト、1998]P15>)歌謡ポップス・クロニクル―素晴らしき歌謡曲に愛をこめて (特集アスペクト)
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まさしく「全部ひっくるめてズンタカタッタッタ〜」な音楽ってことじゃないですか。
そういう音楽、いや音楽に限らずドラマでも映画でもラジオでも舞台でも、ボーイ兄さんやハロプロメンバーによる表現活動に対して、勝手な解釈で咀嚼して、感じたものを言葉にして吐き出す・・・そんな歌謡曲的なアプローチを試みる。そこには受け手の価値観や人生経験が否応なく反映されてしまうから怖くもあるんだけど、それも含めて最高に楽しいのだ。一つの作品であると同時に歌謡曲的アプローチのための素材として、つんくボーイ兄さんが出してくるものは魅力的なのよ。
イマ風J-POPでなく、80年代ノスタルジアでもない。
ネオ歌謡曲、新時代歌謡曲。そんな風に呼んでみたい。ここから既に始まってる何かって、あるんじゃないかな。
余談ですが。
件の∀2話で繰り返し歌われた劇中歌の歌詞(エントリタイトル参照)を思い出す時、僕らは「かつて2月7日生まれといえば真っ先に連想された人」の幸せを祈る気持ちに気がつくのです。これだってあのおっさんが狙って仕込んでいることなのです。いや妄想ですけどね。
一曲たりとも気を抜いて聴くことはできない。そういうミュージシャンって大好きです。