ようやく

『らん』DVDを見ました。
やはり、見終わった後しばらくは言葉を失うね。



絵に描いたような善人/悪人がほとんど出てこないのがさらに深みを加えているように思う。みんなどこかに弱さがあって、みんな何かに縛られていて、それが重なりあい絡みあいして、選んじゃダメな道を選び、そっちいっちゃダメな方向へ進んでいく悲しさと哀れさ、その向こうから湧き上がってくるどうしようもないくらいのいとおしさ。


世慣れていない人物を演技で表現するというのは、経験を積んだ役者であればあるほど難しくなるんじゃないか。
だから、らんをこういう人物として描くのであれば、矢島舞美というのは望んで得られるものでもない最高のキャストではなかったかと。


存在感やハマリ具合じゃないところの話もすると、殺陣の動きね。アクションの始めと終わりの間で目が追いきれなくなるくらいのバネというかスピードというか。見ててえらく気持ちいいのです。


作品と人物、二つの「らん」が矢島舞美と出会うのを待っていた。そういうバイアスかかりまくりの言葉も出てくる。ここはそういうブログだからそれでいいのだ。
というか、もうすべてのキャスティングがハマりまくって、そこに生演奏が加わって最高のグルーヴ感が出ていると感じたよ。初めから合っていたのかもしれないし、合わせるための演技もしているのだろうし。


演劇にも神様っているよなぁ。
秦建日子氏という劇作家/演出家、『らん』という作品、矢島舞美をはじめとする出演者。
運命的といってもいい出会いだったんじゃないでしょうかね。



特典映像のインタビュー、キャスト陣の目がなんと輝いていることか。
これは演技者にとって何かものすごい手ごたえを感じた幸せな作品であったのだろうし、そういうものを見ることができた僕らにとっても幸せな体験。


40年ちょっと生きてれば、どんなに能天気にやってても生きてることすらイヤになることの一つや二つはあるもので。
だけど、こういう体験をしてしまうと「生きてりゃあいいことってのはあるもんだ」と思い直すことができる。


ありがとうございます。