ズンタカ讃歌・接触篇〜この歌はこんな風に聴こえるのコーナー〜

この『ズンタカマーチ〜人らしく生きよう〜』こそが、2012年2月8日に発売された℃-uteの7枚目のアルバム『第七章 美しくってごめんね』において、このアルバムで歌われる必要が、収録されなければならない理由があった歌なのよね。



・・・という書き出しで「お前らこれをコミックソングだと思ってバカにしてるだろバーカバーカ」という文章を4000字くらい書いたのだけど、読み返してみて、もっともコミックソングをバカにしてるバカはヲレ自身だと気がついたから闇に葬りました。うっかりアップロードしていたら、己のバカさ加減を世界中に発信するところだったなぁ、普段それを発信しちゃってないとは思ってないけれど。
大事なのはこの歌がコミックソングか否か、あるいはコミックソングの是非ではなくて、何を歌っているか、何が伝わってきたか、なのだから。



℃-uteを通じて出会い、現在親しくしていただいている友人たちには様々なジャンルの「音楽」に精通している方々が多くいつも勉強させてもらっているわけだけど、今回さすがと思わせてくれたのは我らがはっちまん。パパ*1。伊達に80年代を通過してないね。

これは聴けばわかるとおり『Yellow Submarine』の(かなり斬新な)日本語カバーであって、ビートルズ好きのつんくボーイ兄さんがこれを知らないはずはないと思うのよ。イメージの下敷きにした可能性もないとはいいきれないんじゃないかな。
それだけでなく、日本の流行音楽シーンの歴史において「コミックソング」を語る際にほぼ間違いなく名前が挙がるであろうハナ肇とクレージーキャッツザ・ドリフターズとの関連もある。
・クレージーの熱烈なファンである大瀧詠一がプロデュース
・クレージーの一部メンバーとは前身バンド「キューバン・キャッツ」でともに活動し、クレージーのヒット曲の多くを作/編曲した萩原哲晶がアレンジャーとして参加している
・『スーダラ節』のフレーズも登場する
・・・というわけで、滅多に他人様の意見に耳を傾けないヲレ様だけど、これは降参せざるを得ない。
どうでもいいけどこの動画、淡々と踊るバックダンサーがエンゼル体操を思わせるね。


本音をいうとコミックソングの代名詞として、まるでそれが枕詞かのようにクレージーの名が挙がるのは、2006年11月2日にどうにかキューティークイーンのイベントに行く気を起こそうと、現実への失望に対抗する唯一の武器としてすがるようにクレージーのベスト盤を聴いた者としては、釈然としないものだってあるんだよなぁ。

結成50周年 クレイジーキャッツ コンプリートシングルス HONDARA盤

結成50周年 クレイジーキャッツ コンプリートシングルス HONDARA盤

コミカルな印象が強いのはわかるし、ご陽気に面白おかしく奏でたり歌ったりの曲だって多い。
だけどさ、ちょっと考えてみてほしいんだよな。
たとえば『無責任一代男』。
無責任一代男 植木等 歌詞情報 - goo 音楽

1962年7月20日発売といえば、ざっくりいって映画『三丁目の夕日』シリーズで描かれているであろう(見たことないのよ)時代だ。どれだけ社会通念に対して挑戦的なものだったか、当時を知らないヲレにその衝撃を想像するのは難しい。プレスリーベンチャーズビートルズといった舶来ミュージシャンにだって匹敵するくらいのものがあったんじゃないかな〜、なんて漠然と考える程度。
後の時代の言葉でいうところの「(社会派/反体制)ロック」のようなものとしても機能したかもしれない。60年代の終わりに高石友也岡林信康らがユーモアをこめて社会を風刺した「メッセージ・フォーク」が流行したのは、それ以前にクレージー(と青島幸男)によって「社会問題というのは眉間に皺を寄せて考えるだけでなく、笑い飛ばしてもいいんだ」という気分が大衆のなかに出来上がっていたから・・・というのは大げさだろうか。
コミックソング、コミックバンドの代表格」というだけの一面的なものの見方は、一種のプロテストソングとも考えられる「社会派」の側面、また彼らの起こした「革命」が無視されてしまうようで寂しい。


ちなみに、アイドル歌謡でクレージーというと『大和撫子“春”咲きます』(新井薫子)って大ネタがある。

サビをよく聴くと・・・
ノソ*^ o゚)<ワタシ 春 咲きます♪
(o・v・)<見てよホラ 咲きます♪
从・ゥ・从<スイ〜ラス〜ダララッタ ス〜ダララッタスイスイ♪
一風堂の、というよりおニャン子方面の作曲で有名な見岳章の手になるテクノ調アレンジに乗せて、突然『スーダラ節』を思わせるメロディーが出てくる驚愕の展開。やってくれるな岩里先生*2
1983年2月21日発売だから、29年前になるのか・・・さすがにヲレが発見したものではなくて、『よい子の歌謡曲』のレビューで指摘されたもの。

歌謡曲という快楽―雑誌『よい子の歌謡曲』とその時代 (オフサイド・ブックス)

歌謡曲という快楽―雑誌『よい子の歌謡曲』とその時代 (オフサイド・ブックス)

こういう屈折した「発見」って好きだし、屈折した客も、その屈折のスタイルによっては大好きだ。みんなもっと屈折しようぜ、ストレートすぎて面白くないんだよ。



ずいぶんと話が逸れた。後回しにしておいて、これで終わったらヲレだって拍子抜け。そんなわけで、
「ヲレにはこう聴こえた」
ってな感じでいってみましょう。



一瞬『俺ら東京さ行ぐだ』が登場するイントロを経て、まずは前サビ(だよね?)。曲名に反して全然マーチじゃないので面食らいましたが、「マーチじゃないじゃん」とただツッコミを入れてドヤ顔するだけでは、作り手、送り手(当然「歌い手」も含まれる)の心を萎えさせるような受け手にしかなれない。それだけは絶対に避けたい。
下手に行進曲を作っちゃうと、メロン名物ガルパワ行進*3みたいなことになっちゃうから、これはこれでいいんじゃないでしょうか。
落ち着いて聴いてみると、岡井ちゃんさんの唸るようなヴォーカルには『ハクション大魔王』の雰囲気がある。某掲示板で教えてもらったところによると、ベースラインもそっくりだとか。音楽に詳しくないからわからなかったわー。

余談だけど、これを歌ってる嶋崎由理(現・しまざき由理)、翌年の『みなしごハッチ』が中1だったというから、当時小6。年齢を思わせないパワフルなヴォー カルですなぁ。後に『Gメン’75』のEDを歌った際には、また違った味わいの歌声を聞かせてくれました。


転調してようやくマーチ調・・・と思わせて音頭なんだけど、ロックからマーチ調への転調といえば『戦え イナズマン』だね。

そんな感じで『イエロー・サブマリン音頭』に入っていく、という展開。過去に『しあわせきょうりゅう音頭』『ドドンガドン音頭』があるように、オンド・ミュージックはつんくボーイ兄さんのライフワークの一つでもある。
アイドルでオンド・ミュージックといえば『Wa・ショイ!』(堀ちえみ)『恋愛用語の基礎知識』(早坂好恵)なんかを思い出しますなぁ。って両方(ポニー)キャニオンじゃまいか。Buono!ポニキャンにずーっといたらいつかは回ってきたかもね。


さすがに早坂好恵の方は動画がないか。アルバム曲、しかもイベントで「歌手生命賭けてます!」と発言したのはよかったけど売れなくて本当に歌手生命をほぼ絶たれた2ndアルバムの曲だもんね。ただアルバムでその前に収められた『天使のバカヤロー』とセットで聴いてギャップを楽しむべきだとも思うので、いきなり単体で聴くのも、アルバム持ってるからいつでも聴ける身としてはどうかと思う。

HAYASAKA

HAYASAKA


ポニキャン以外だとこれですね。

いい時代だったなぁ(汗)。


IKZO が入ってくる意味合いについては降参するしかないけれど、ハクション大魔王イナズマンとくれば、世代的に親しんだ番組であります。イナズマンは本放送 (1973年)に間に合ったけど、ハクション大魔王(1969年)は生まれた年だもの、どうしたって再放送。東京12チャンネルで見た印象が強すぎて、本放送はフジテレビだったといわれてもピンとこないくらい。
ヲ レから見て一歳上であるつんくボーイ兄さんも、関東と関西ではテレビ事情がまるで違うから断定はできませんが、同じ体験をしていたかもしれない。であるならば、ビートルズに出会う前に聴いていた、ある意味ルーツ・ミュージックである可能性だってないとはいえない。音頭だって、地元の盆踊りなんかで耳にしていたでしょう。ちなみにわが幼少期は、地元の盆踊りで五木さんの『ひろしのさくら音頭』をよく聞いた。


とはいえ、『ズンタカマーチ〜人らしく生きよう〜』でより注意すべきは歌詞、それもたった一言なんじゃないかと思うんだよな。


つづく

*1:おめでとうございます。

*2:いうまでもないけど、作曲の「岩里未央」ってのは初期Buono!でおなじみ作詞の岩里祐穂先生のPNね。

*3:ヲレが目撃したのは、客席を横断する通称「中央通路」をシモ手→カミ手へ行進、そのままカミ手側出入り口から出てロビーをグルッと回り、シモ手側出入り口から自席へ戻る・・・という派手なものでした。